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「脳転移」と友とわたし㉝「改善するのは状況であってその人ではない」という視点をもって在宅の準備へ


少しずつ変化が出始めた友。

友は2018年12月30日に亡くなりました。
看取りとその後はこちら→https://sarah51.exblog.jp/i31/


相変わらず私が帰りにハグすると、
ぎゅうっと爪を立ててくることに
変わりはなかったけど、

病院のスッタフの方たちと日中
筆談を通じて少しずつ長い会話が
できるになってきていた。

とはいえ、友の返事の多くが、

「先ほど体を拭いてもらい嫌な思いをさせて
 申し訳ありません」
「私は恐ろしいことをしました」
「申し訳ありません」

といった謝罪や自分を責める言葉も
まだまだ多く、またベッドから
ほとんど動こうとしていなかった。

ただ脳のMRIも問題がなく、
CTで全身の転移検査も特に変わりないと
された友は急性期の病院にそう長く
いれるわけではなかった。

退院しないといけない。

友には「自宅に行けるよ!行くよ!」
と言っていた私だけど
実際私は自分の身内ですら自宅で
看取った経験もなく、

ましてや耳の聴こえない
心を閉じ切ってしまった友の
一人暮らしをどう支えたらいいか。

その方法にやや悩んでいた。

もし私が1人暮らしなら、
いっしょに住めばいい。

でも事はそれほど単純ではなく
夫は私があれこれと友のために
時間と労力とお金やらなにやらを割き、
家のことが後回しになっていることに
いろいろと不満がいっぱいだった。

ヤスミンのところに行く。

というだけで不機嫌になることも
増えていて自宅でそういった話も
できないと感じていた。

そんな時、在宅ホスピスをしている
先生方の勉強会が開催されることを知り、
友の病院からも近かったので
セミナーを聞いてすぐ病院へ面会に
行けるなと思った私は早速申し込んだ。

この時スライドのある1行に目が留まった。

「改善するのは状況であってその人ではない」

というソーシャルワークの視点で
とらえた在宅ケアの考え方だった。

そして

「治すことはできなくても、
心地よくすることは常にできる。」

という緩和ケアの原点ともいえる
本のタイトルを紹介してくださっていて。

私はそうだ!これだ!
これをすればいいんだ!!

と自分の役割を見出すことができたのです。

友の入院中何度となく私は
心療内科を受診できないか、
心のケアをしてくれる認定看護師か
医師と彼女が話をする機会をもらえないか。
不安に対して何等かの薬などはないものか。

など病棟看護師や主治医などにも
伝えていた。

でも脳外科医は
「手術が専門なので、、、」
婦人科医は
「余命を聞いて受け入れられなかったのであれば、
 時間が解決するしかない」

というばかり。
なんとか認定看護師さんが話を
来てくれるようになったけど
本人はそれで良い変化を感じてるとか
話ができてよかったとかいう感覚は
全く持っていなかった。

それだけではない。

画像上なんら問題点が見つからなかった
彼女に対し、看護師によっては、
友が「演技している」「実際にはもっと動けるはず」
「自分でできることはしてください」

といったことを話す人も出てきた。

悔しかった。

救急外来で意識がなくなった時
彼女の震えやつっぱりながら歩く様子を見たとき、

確かに私も脳の問題じゃない。
心の問題が大きい。

そう思った。
でも友自身にこれ以上
なんの負担をかけられるというのか。

食事も1割も食べない。
カーテンをきっちり閉めて、
耳の聴こえない友が
ベッドにじっと座るか寝るか。
携帯もない。ネットもない。
誰とも会わない。

そんな生活を好んですると思うのか。

たとえ演技だとしても、
嘘だとしても、

「嘘をつかないといけない状態」

に陥っている友に何ができるか。
それを考えるのが医療じゃないのか。
福祉じゃないのか。

そう思っていたから。
だからこのセミナーに行って、

「変えるのは状況」「本人じゃない」

という言葉は、
そうだ、友にとって安心できる環境を
私が考えればいいんだ。

友にはそのままでいてもらえば
それでいいんだ。

そう強く思えたのです。

セミナーの講師でもあり時折お世話になっていた
緩和ケア医師で在宅ホスピスをしている先生に
友の住所近くで連携できそうな訪問医師や
緩和ケアに理解のある医師・看護師がいる病院等を
お聞きして、どう連携するか早速考えた。

在宅でお世話になる予定にしていた
ケアマネと私のパート先となる
訪問看護ステーションにも状況と私が
思うことを伝え、さっそく地域の緩和ケア病院と
連携できるよう働きかけてくれることに。

「退院しよう」
「できるよ」

それだけを胸にとにかくできる限りの
環境設定をあれこれ考えて実施した。

そして緊急入院から1週間が過ぎ、
週が明けた頃から友にもぐっと変化が出てきた。

ハグの後、爪を立てなくなったのだ。

というよりも自分から私と同時に
背中に手をまわしてそっとポンポンポンっと
叩いてくれるようになった。

またね。

と手話をすると目がうなずいているかのように
じっと私を見るようにもなった。

私の普段と同じあんなことあったー
こんなことあってー、これ美味しかったよな
会話にも時々目を向けたり、
私の携帯の写真をちらっと見ることも出てきた。 

絶対退院して、曼荼羅描いたり
個展にだって行けるようになるよ。

そう思いながら。
でも退院ってそう簡単じゃなかった。



つづく 












by sarah_51 | 2019-03-30 12:24 | 医療と健康  | Comments(0)